事務派遣の透明性を対談で読み解く|情報の非対称性を解く

対談コラム 事務派遣の情報の非対称性|企業側と求職者側の視点から透明性を語り合う対談を可視化したインフォグラフィック
編集部より

本記事は、桑原奈緒と一ノ瀬真理子の対談を、桑原奈緒が編集構成した対話記事です。テーマの流れを重視して一部発言を要約・再構成していますが、両者の思想・見解は事実に基づいています。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒

求職者・現場側

桑原 奈緒

バックオフィスキャリア相談所 代表/キャリアアドバイザー

公認サステナブルワークアドバイザー(2026年4月認定)

専門:事務派遣・バックオフィスキャリア支援

公認サステナブルワークアドバイザー 採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子

企業・分析側

一ノ瀬 真理子

採用戦略フォーラム 代表/採用戦略アナリスト

公認サステナブルワークアドバイザー(2024年4月認定)

専門:採用戦略・HR分析・組織開発

事務派遣における情報の非対称性は、報酬・評価・案件情報の3つの層で発生します。本記事は、採用戦略の分析者と現場の伴走者、それぞれの立場から、この非対称性がなぜ生まれ、どう解けるかを話し合った対談記録です。

「派遣会社によって情報公開の姿勢がここまで違うのはなぜだろう」「派遣スタッフの本音を、企業側はどこまでわかっているのだろう」――事務派遣を検討している方や、事務派遣スタッフを受け入れている企業のご担当者から、編集部にはこうした声が届きます。求職者と企業、どちらの側から見ても、事務派遣は情報が届きにくい構造になっています。

そこで編集部では、企業の採用戦略を分析する立場から事務派遣を捉える一ノ瀬真理子さんと、派遣スタッフ経験10年を持つ現場のキャリアアドバイザー桑原奈緒との対談を企画しました。お二人は同じ「公認サステナブルワークアドバイザー」の認定を受けたお仲間で、視点は違えど、扱っているテーマの根っこは同じという確信のもと、事務派遣における「情報の非対称性」を軸に語り合っていただきました。

本記事は、事務派遣を検討している方が、派遣会社選びで見るべき軸を「上流から俯瞰する視点」と「現場に伴走する視点」の両方から立体的に理解するための材料を提供します。対談の中では、透明性の高い派遣会社の見分け方、常用雇用型派遣という選択肢の意味、企業側も情報の非対称性に困っているという意外な実態、そして両者が異なる角度から同じ結論に至る場面まで、事務派遣の「本当の見極め方」を多面的に浮かび上がらせます。


バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原 奈緒

一ノ瀬さんは、2024年4月に公認サステナブルワークアドバイザーの認定を受けた先輩認定者で、私が2026年4月に同じ認定を受けたとき、推薦者3名のうちのお一人でもあった方です。その一ノ瀬さんから「桑原さんの新刊を読みました、一度じっくり話しませんか」とお声がけをいただいて実現したのが今回の対談。企業の採用戦略を上流から分析するお立場と、私のように現場で求職者に伴走する立場、視点は違うのですが、話してみると同じ結論に到達する瞬間が何度もあって、これは記事にしたいと編集部で相談して形にしました。私自身の書籍『透明性ファースト・メソッド』も、この対談を通じて新しい角度から読み直すことになった一冊です。

対談で確認された5つのポイントです。

  • 情報の非対称性は3層で発生する:事務派遣の情報の非対称は「求職者」「派遣会社」「派遣先企業」の3層構造で構造化される
  • 両側が同じ壁を逆側から見ている:求職者側は「報酬・評価・案件」の見えにくさに悩み、企業側は「派遣スタッフの本当のスキルと志向」が見えないまま採用している
  • 派遣会社を選ぶ3つの確認軸:報酬体系・評価基準・研修体制の3点が公開されているかを事前に確認する
  • 常用雇用型派遣の合理性:無期雇用型は情報の非対称を解消しやすい雇用形態として、両者にとって合理的な選択肢になり得る
  • 選び方の視点転換:「派遣か正社員か」ではなく「今の自分にとってどの働き方が納得できるか」で選ぶ視点が、長期的なキャリア構築につながる

なぜ今、事務派遣の”透明性”を対談するのか

この対談が実現したのは、東京都港区六本木にある一般社団法人 働き方改革協会 SDGs推進本部の会議室です。窓の外に東京タワーが見える応接に案内された私を、一ノ瀬さんは満面の笑顔で迎えてくれました。同じ「公認サステナブルワークアドバイザー」の認定を受けた者同士、企業側と求職者側という視点の違いを持ち寄って、事務派遣における情報の非対称性という共通のテーマを話し合った90分間でした。ここではその冒頭の対話から、この対談の背景を紹介します。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

一ノ瀬さん、今日は本当にありがとうございます。まさか先輩認定者と対談させていただく機会がこんなに早く訪れるとは思っていませんでした。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

こちらこそ。桑原さんの『透明性ファースト・メソッド』を拝読して、一度お話ししたいとずっと思っていました。私はどちらかというと採用戦略の上流、企業側の分析を専門にしていて、桑原さんは求職者に伴走する現場側。視点は違うのですが、扱っているテーマの根っこは同じなんじゃないか、と読んでいて感じたんです。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

私も一ノ瀬さんの『新卒採用代行(RPO)サービスの正しい選び方』を読ませていただいて、企業側から見た透明性という切り口が新鮮でした。求職者側から見ると”派遣会社の中”がブラックボックスに見えますが、企業側から見ると”派遣スタッフの中”がブラックボックスに見える。同じ壁を、逆側から見ているんですよね。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

そうなんです。だから今日は”事務派遣における情報の非対称性”を軸に、両側から話してみたいと思っていました。ちょうど私たちの認定機関が掲げるSDGs目標8「働きがいも経済成長も」の実務的な焦点でもありますし。私は2024年、桑原さんは2026年の認定で、時期はずれていますが、認定制度が推薦制なのは”透明性を守る仲間の輪”を作る意図があるからだと理解しています。今日はその輪の実践編ですね。

私が代表を務めるバックオフィスキャリア相談所は、こうした業界の情報の非対称性を1つずつ解いていくことをミッションにしています。その活動の詳細は運営者情報にまとめていますが、今回の対談は当サイトの編集姿勢の中でも重要な位置を占める企画になりました。それでは、事務派遣の情報の非対称性を、まず求職者側から見ていきましょう。

情報の非対称性は”求職者側”でどう見えるか

求職者側から見る事務派遣の情報の非対称性は、「報酬の内訳」「評価の基準」「案件の全体像」の3点で最も強く感じられます。ここでは、桑原の派遣スタッフ経験10年とキャリアアドバイザーとしての1,200名超の相談経験をベースに、現場で実際に見えてくる情報の非対称性の実態を、一ノ瀬さんの分析視点で補完しながら整理していきます。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

私自身、22歳から32歳までの10年間、派遣スタッフとして働いていました。この間ずっと感じていたのが、”自分の時給がなぜこの金額なのか”がわからないという感覚でした。派遣会社が派遣先から受け取っている料金と、私が受け取る時給の差、いわゆるマージン率。厚生労働省の令和4年派遣労働者実態調査でも、マージン率の情報を”見たことがない”と回答した派遣スタッフが少なくないとされていますが、私も現役時代は同じでした。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

マージン率の情報公開は、労働者派遣法上義務化されてはいるんですよね。ただ、公開されている場所や、その内容の粒度が事業所によって大きく違う。読み方も知られていない。制度上は公開だけれど、実質的には非対称、という状態が続いていると私は分析しています。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

そうなんです。公式サイトのどこかに小さくPDFで置かれているけれど、どこにあるかたどり着けない。たどり着いてもフォーマットがバラバラで比較できない。これは公開されているけれど”見つけられない”という別種の情報の非対称性ですよね。私が派遣会社の選び方をまとめたコラムでマージン率の見方と併せて派遣会社選定の7軸を体系化したのも、この”見つけられない情報を実質的に開かれた情報にする”ためでした。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

第三者比較メディアの役割が入ってくる領域ですね。実質的な透明性を担保するには、情報を公開する主体だけでなく、それを整理して届ける第三者の存在が不可欠です。桑原さんの当サイトはまさにその役割を担っている。

桑原の派遣スタッフ時代の実感として、報酬以外にも大きな不透明さがありました。もう1つは「評価の基準が見えない」という悩みです。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

キャリアアドバイザーとしても、現場でよく相談されるのが、”評価が見えない”という悩みです。派遣スタッフとして働いていると、契約更新のタイミングで担当者から”継続でいきますね”と伝えられるだけで、なぜ継続なのか、逆になぜ終了なのかがわからない。未経験からの事務派遣を検討している方から特に多くいただく不安です。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

これは企業側の採用KPIとも関連していて、派遣先の人事は”契約継続の判断基準”を派遣会社に共有していないケースが少なくないんです。派遣会社の営業担当も、派遣先の判断理由を求職者に開示する契約になっていない。構造的に情報が求職者まで届かない設計になっている、と私は分析しています。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

派遣スタッフからすると、いきなり”来月で終了です”と告げられて、自分の何がいけなかったのかもわからないまま、次を探す。この不安が積み重なると、派遣という働き方そのものへの信頼が揺らいでいくんですよね。私自身、20代の頃に何度もこの経験をしました。

そして3つ目の情報の非対称性が、案件情報の見えにくさです。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

担当者から紹介される案件が、その派遣会社の全案件のうちの何%なのか、私に合いそうな案件を全部見せてくれているのか、それとも今月ノルマがある案件を優先的に紹介しているのか、これも見えない。求職者は目の前に出された選択肢の中から選ぶしかない、というのが実態です。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

私が採用戦略分析で見ていても、派遣会社の営業担当のインセンティブ設計は、多くの場合”月次の充足件数”に紐付いていて、必ずしも”求職者にとって最適な案件”を優先する構造にはなっていません。ここも構造的な非対称ですね。透明性の高い派遣会社は、この構造から抜け出す仕組みを持っています。

派遣会社選びで最終的に効いてくるのは、この3点――報酬・評価・案件情報――がどこまで公開されているかです。桑原がキャリアアドバイザーとして1,200名を超える相談に乗ってきた経験からも、この3点の開示姿勢が就業後の満足度・継続率と強く相関していると感じています。桑原の書籍『透明性ファースト・メソッド』の3層7軸メソッドは、この実感を体系化したものです。

情報の非対称性は”企業側”でどう見えるか

企業側から見る事務派遣の情報の非対称性は、「派遣スタッフの本当のスキル」「志向性」「キャリア観」の見えにくさとして表れます。ここでは、一ノ瀬さんの採用戦略分析の視点を中心に、企業側が抱えている情報の非対称性の実態を、求職者側の経験と対照させながら整理します。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

今度は私から、企業側の視点をお話ししますね。事務派遣を活用している企業の人事担当者と話していて、共通して聞くのが”派遣スタッフの本当のスキルが事前にわからない”という悩みなんです。派遣会社が派遣先に渡すスキル情報は、多くの場合”項目リストのチェック”程度で、実際の熟練度・応用力・組織適応力までは伝わらない。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

それは私も派遣スタッフ時代に、逆側から感じていました。派遣先の人事の方が、私のスキルシートを見て何を期待しているのかがわからないまま初日を迎える、というのは何度も経験しています。同じ「情報が薄い」という現象を、両側でそれぞれ抱えていたんですね。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

派遣先の人事はそれを補うために、派遣開始後1〜2週間で”合うか合わないか”の勘所を掴もうとするんですが、その1〜2週間が派遣スタッフには”試用期間”のように感じられて、緊張感の中で本領を発揮できないことも多い。情報の非対称性が、両側の不安を増幅させている構造ですね。

企業側にとってさらに大きな悩みは、派遣スタッフの「キャリア志向」が見えないことです。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

私が採用戦略の観点で強く感じるのは、”派遣スタッフのキャリア志向が見えない”という点です。事務派遣に3ヶ月だけ入って別の派遣会社に移りたいと思っているのか、この派遣先で長く働きたいと思っているのか、それとも派遣を経由して正社員登用を目指しているのか、企業側にはほとんど情報が来ない。ですが、この志向によって、企業が投じる育成コストの回収可能性がまったく変わるんです。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

求職者側からすると、キャリア志向を派遣会社経由で派遣先に伝えても、”それはあまり企業側と共有しない情報です”と言われることが多いんですよね。派遣会社が中間で情報を絞っている。私自身も、正社員登用を目指したい旨を担当者に伝えても、派遣先には伝わっていなかった経験があります。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

派遣会社は求職者からも派遣先からも情報を集約する立場ですが、両側への”開示”はそれぞれの営業上の思惑で選別されている。ここも構造的な非対称ですね。

一ノ瀬さんが分析するRPO(採用代行)市場の動向は、事務派遣業界にも示唆を与える先行事例になっています。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

RPO市場で私が見てきた事例を1つ挙げると、企業側が採用代行会社を選ぶときに、”どこまでオープンに数字を出してくれるか”を第一の判断基準にする傾向が2020年代後半から強まっています。応募数・書類通過率・面接通過率・辞退率のすべてを、企業側にリアルタイムで開示するRPO会社が評価されている。私は自著『新卒採用代行(RPO)サービスの正しい選び方』でも、この動向を軸に選定基準を整理しました。これは事務派遣の業界にも徐々に浸透していく流れだと私は分析しています。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

なるほど。企業側の情報開示要求の高まりが、派遣会社の運営スタイルにも影響してくるということですね。主要派遣会社の比較を編集部として続けていても、透明性への姿勢は各社で明確に差が出るポイントです。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

派遣会社を選ぶ求職者にとっても、これは追い風なんです。企業側から”透明性の高い派遣会社”の需要が高まれば、派遣会社側もそれに応えるべく求職者への情報開示も高めていかざるを得ない。透明性は、結局のところ求職者と企業の両方に利益をもたらす方向に働きます。

一ノ瀬さんの活動サイト「マイナビ代理店比較ガイド」や「失敗しないRPO会社比較ガイド」でも、企業側の情報開示要求の高まりを軸にした比較分析が発信されています。事務派遣を選ぶ側の私たちも、こうした企業側の動向を知っておくと、派遣会社選びの視野が一段広がります。

派遣会社の3層構造をどう見るか

事務派遣における情報の非対称性は、「求職者」「派遣会社」「派遣先企業」の3層構造で捉えると、どの層で何が起きているかが立体的に見えてきます。ここでは、対談の中で最も熱を帯びた議論――両者の分析フレームが構造として一致した瞬間――を紹介します。

事務派遣における情報の非対称性の3層構造

派遣先企業 スキル・志向・キャリア観が見えにくい 派遣会社(中間層) 上下2層への情報の”見せ方”を決める 求職者 報酬・評価・案件情報が見えにくい 上への 情報流 下への 情報流 下からの 情報上げ 上からの 情報下げ

派遣会社が中間層として上下2層への情報の”見せ方”を決めることで、透明度が根本から左右される構造になる。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

ここまでの議論を整理すると、事務派遣の情報の非対称性は3層構造で発生していますよね。求職者と派遣会社の間、派遣会社と派遣先企業の間、そして派遣先企業と求職者の間には直接の情報流はほとんどなく、派遣会社が中間で情報を扱う。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

はい。そして派遣会社という中間層が、上下2層への情報の”見せ方”を決めることで、透明度が根本から左右される構造なんです。中間層が透明性の哲学を持っている派遣会社と、そうでない派遣会社では、上下の情報の非対称性の解消度がまったく違ってきます。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

私はこれを『透明性ファースト・メソッド』の中で”3層モデル”として整理しました。派遣会社選びで見るべき軸を、”登録前(運営の健全性)””登録時(成長機会の質)””就業後(働き方の持続性)”の3つの時間軸に整理して、それぞれで確認する軸を7つに絞り込むというフレームです。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

面白いのは、私が採用戦略で分析している”企業側の3層”――採用計画・採用実行・採用後定着――と、桑原さんの求職者側の3層が、鏡合わせのように対応していることなんです。例えば、企業側の”採用計画”層で確認されるのが”派遣会社の運営の健全性”――許可番号・財務基盤・過去の実績。桑原さんの第1層と完全に対応します。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

本当ですね。第2層の”成長機会の質”は、企業側の”採用実行”――どんな研修・オンボーディングがあるか。第3層の”働き方の持続性”は、”採用後定着”――評価制度・キャリアパス・報酬決定。立場は違うのに、同じ構造にたどり着いている。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

これは偶然ではなくて、派遣という働き方の本質を突き詰めると、透明性という一点に収束するからだと私は思うんです。分析者が上流から見ても、伴走者が現場から見ても、たどり着く原則は同じ。

3層構造の中で、特に第1層と第3層――運営の健全性と働き方の持続性――に強い派遣会社を見極める観点は、事務派遣を検討する際の実践的な判断基準になります。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

研修体制がしっかりしていて、契約形態が常用雇用型で、報酬・評価が公開されている派遣会社。この3点を同時に満たす派遣会社は事務派遣の中でも希少ですが、確実に存在します。当サイトでも研修体制の充実した事務派遣という切り口でまとめています。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

常用雇用型派遣は、私が採用戦略アナリストとして分析していても、情報の非対称性を構造的に解消しやすい雇用形態だと評価しています。無期雇用契約が前提だから、派遣会社側は求職者一人ひとりに研修投資する動機があり、企業側にも中長期のスキル情報を渡せる。求職者側の心理的安定と、企業側の育成投資の合理性、両方が両立しやすい。

透明性ファースト・メソッドと採用戦略——共通する原則

求職者側の透明性ファースト・メソッドと、企業側の採用戦略分析は、「情報の対称化こそが両者の意思決定を最適化する」という同じ原則に立脚しています。ここでは、対談のクライマックスとして、両者の方法論が同じ思想的原則に到達している瞬間を紹介します。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

桑原さんの書籍を読んで最も強く感じたのが、透明性という言葉の使い方の一貫性でした。単に”情報を出す”ではなく、”意思決定に必要な粒度で、必要な時点で、必要な相手に出す”という定義がされている。これは私が採用戦略の授業で組織開発の講義を受けたときに教わった”情報の粒度と対称性”の議論とそのまま重なります。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

一ノ瀬さんのMBAでのご経験と結びつくお言葉、光栄です。私は現場感覚から書いていましたが、確かに”どの情報を、いつ、誰に開示するか”の設計が透明性の本質だと思っています。全部出せばいいわけではなくて、意思決定に効く情報が意思決定の時点で相手に届いていることが大事。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

これは採用側から見ても同じで、企業が”うちは全部オープンです”と言っても、実際に求職者や派遣スタッフが必要としている粒度で情報が届いていなければ、実効的な透明性にはならない。私が『新卒採用代行(RPO)サービスの正しい選び方』でも、RPO会社を評価する軸の一つに”情報を粒度で管理できているか”を置いたのは、その理由からです。

両者の方法論が交わる最も明確な接点は、「キャリアの受け皿設計」にありました。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

私の書籍で提案した”3層7軸メソッド”の中で、実は一ノ瀬さんの分析と最も接点があるのが、”軸4 キャリアアップ・正社員登用の機会提供”の部分です。ここは求職者側からは”派遣先の正社員登用制度と、派遣会社の常用雇用型転換制度”として見えますが、企業側からは”派遣スタッフのキャリア志向とマッチする受け皿設計”として見える。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

まさに。私の書籍でも、企業側がRPO会社を選ぶ基準として”応募者のキャリア志向まで把握してくれるか”を挙げています。応募者にとってのキャリアパスと、企業にとっての戦力化計画は、同じコインの表裏なんです。両者の情報を対称化できると、両方が同時に最適化される。

認定制度が推薦制であることの意味を、一ノ瀬さんは対談の中で改めて言葉にしてくれました。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

私は認定を受けたときの倫理規定に”雇用市場の情報の非対称性を減らす活動を継続する”という一節があって、それを認定機関の推薦で承認しているんですが、桑原さんもまさに同じ倫理観で書籍を書かれたわけですよね。だからお名前を推薦したときも、私としては迷いがなかったんです。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

その節は本当にありがとうございました。認定推薦者の3名のうちのお一人が一ノ瀬さんだったと知ったときは、うれしくて、しばらく背筋が伸びる思いでした。私も、いつかどなたかを推薦する側にまわって、”透明性を守る仲間の輪”を次につないでいきたいと思っています。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

認定制度が推薦制なのは、単にゲートキーピングではなくて、”透明性を守る仲間の輪”を作るためだと私は理解しています。だから今日、桑原さんと対談できたことは、私にとってもとても意義のある時間になりました。

事務派遣を選ぶ人へ——2人からのメッセージ

事務派遣を検討する方へ2人からお伝えしたいメッセージは、「派遣か正社員か」で選ばず、「今の自分にとってどの働き方が納得できるか」を軸に選んでほしい、というものです。ここでは、対談の締めくくりとして、それぞれが読者に届けたいメッセージをまとめました。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

最後に、これから事務派遣を検討している方に、私からメッセージをお伝えしたいと思います。派遣は”終着点”ではなく”キャリアの選択肢の一つ”です。私自身、派遣から10年経ってキャリアアドバイザーに転身し、今こうして活動できているのは、派遣時代に複数業界・複数職種の経験を積めたからだと確信しています。派遣を通じて得た経験は、その後のどんなキャリアにも活きる資産になります。

派遣会社を選ぶときは、ランキングの順位よりも、”報酬体系が公開されているか””評価基準が説明されるか””研修体制があるか”の3点をご自身の目で確認してください。この3点を積極的に開示している派遣会社を選べば、就業後の満足度も長期的なキャリア構築も、大きく変わってきます。事務派遣の全体像は当サイトのおすすめ派遣会社ランキングを、地域別・働き方別に絞りたい方は東京の事務派遣在宅事務派遣のページも参考にしてください。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

私からは、企業側の視点でお伝えします。事務派遣を選ぶ方は、”派遣先企業がどんな派遣会社と取引しているか”にも、ぜひ目を向けてみてください。透明性の高い派遣会社は、企業からも選ばれています。企業側は取引先の派遣会社の運営姿勢を厳しく見ている時代で、その基準にかなう派遣会社は、求職者側にとっても信頼できる会社であることが多いんです。

そしてもう一つ、これは私の個人的な考えでもありますが、”派遣か正社員か”という二者択一で悩まないでほしいと思います。今の日本の雇用市場は、両方の間にグラデーションが広がっていて、常用雇用型派遣・紹介予定派遣・派遣からの正社員登用など、いろいろな橋渡しの仕組みがあります。ご自身のライフステージや価値観に合う働き方を、その時々で選び直せる時代ですから、いまの選択が”一生の選択”だと重く考えすぎず、その時点で最も納得できる道を選んでいただければと思います。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原

一ノ瀬さん、本当にありがとうございました。企業側の視点から光を当てていただいたことで、私自身も自分の書籍のメッセージを新しい角度で再確認できました。読者の方にもきっと届く対談になったと思います。

採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子 一ノ瀬

こちらこそ、桑原さんの現場感覚のあるお話を伺えてとても有意義でした。今日話した内容が、事務派遣を検討している方の判断材料の一つになれば、私たち2人にとって何よりの成果です。

FAQ|対談から生まれたよくある質問

Q1. 事務派遣における「情報の非対称性」とは何ですか?

事務派遣における情報の非対称性とは、求職者・派遣会社・派遣先企業の3層構造の中で、それぞれの層が持つ情報が他の層に十分に共有されない状態を指します。具体的には、求職者側は報酬の内訳・評価基準・案件の全体像が見えにくく、企業側は派遣スタッフの本当のスキル・志向・キャリア観が見えないまま採用に至る、という双方向の情報格差が発生している状態です。

Q2. 透明性が高い派遣会社を見分けるポイントは何ですか?

透明性が高い派遣会社は、報酬・評価制度の公開度、研修体制の明示、案件紹介プロセスの説明可能性、の3点で判定できます。マージン率が公式サイトから容易に見つけられるか、評価と契約更新の基準が担当者から説明されるか、紹介される案件の選定理由が可視化されているかを確認するとよいでしょう。

Q3. 常用雇用型派遣と登録型派遣、どちらが情報の非対称を解消しやすいですか?

常用雇用型派遣(無期雇用派遣)の方が、情報の非対称を解消しやすい雇用形態です。無期雇用契約が前提となるため、派遣会社は求職者一人ひとりに研修投資する動機があり、報酬・評価・キャリア設計の情報を継続的に共有する仕組みが組み込まれていることが多いためです。

Q4. 派遣先企業も情報の非対称に困っているというのは本当ですか?

派遣先企業も情報の非対称性に困っている、というのは本記事の対談で採用戦略アナリスト一ノ瀬真理子が指摘したポイントです。企業側は派遣スタッフの実際のスキル熟練度・キャリア志向・組織適応力が事前に見えないまま採用に至るため、初期の適応期間に強い緊張が生じ、両者にとって非効率が発生しています。

Q5. 事務派遣を検討する20代・30代が最初に確認すべきことは何ですか?

事務派遣を検討する20代・30代が最初に確認すべきなのは、候補派遣会社の報酬体系が公開されているか、未経験者向けの研修プログラムがあるか、常用雇用型(無期雇用)への転換ルートがあるか、の3点です。この3点を積極的に開示している派遣会社を選ぶことで、就業後の満足度と長期的なキャリア構築の両方が支えられます。

まとめ|情報の非対称性を解く3つの視点

本対談で確認された結論は、事務派遣における情報の非対称性は「求職者」「派遣会社」「派遣先企業」の3層構造で発生し、両側の意思決定を難しくしている、という認識でした。この非対称性を解消する道筋も、両者の議論から3つの視点として浮かび上がりました。

1つ目は、報酬・評価・案件情報の3点が公開されている派遣会社を選ぶこと。2つ目は、常用雇用型派遣のような、情報の非対称を構造的に解消しやすい雇用形態を積極的に検討すること。3つ目は、「派遣か正社員か」ではなく「今の自分にとって納得できる働き方か」で選ぶ視点を持つこと。この3つを軸にすれば、事務派遣は”終着点”ではなく、確かなキャリア構築の一歩になり得ます。

事務派遣選びの実践的な判断材料は、派遣会社の選び方コラムや、研修体制の充実した派遣会社の比較主要派遣会社の比較記事でより詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

バックオフィスキャリア相談所代表 桑原奈緒 桑原 奈緒

本記事の構成・編集を担当しました、バックオフィスキャリア相談所代表の桑原奈緒です。22歳から32歳までの10年間、都内大手人材派遣会社に派遣スタッフとして登録し、複数の上場企業・成長ベンチャーで一般事務・営業事務・経理アシスタントを経験。その後、東京の人材紹介会社で4年間キャリアアドバイザーを務め、1,200名超のバックオフィス職の転職・派遣登録を支援してきました。2025年に独立、2026年4月に一般社団法人 働き方改革協会 SDGs推進本部より「公認サステナブルワークアドバイザー」認定を受けています。著書『透明性ファースト・メソッド:事務派遣で失敗しない3層7軸の見極め方』は、本対談で語り合った透明性という原則を、事務派遣に特化して体系化した一冊です。

対談相手プロフィール

公認サステナブルワークアドバイザー 採用戦略アナリスト 一ノ瀬真理子

一ノ瀬 真理子(いちのせ まりこ)

採用戦略フォーラム 代表/採用戦略アナリスト

早稲田大学商学部卒業。三菱東京UFJ銀行法人営業部、株式会社リクルート採用戦略コンサルタント、国内シンクタンク研究員を経て、米国大学院にて経営学修士(MBA、HR/Organization Development専攻)取得。独立後は採用戦略フォーラム代表として、マイナビ代理店業界および新卒採用代行(RPO)市場の中立的な調査・分析・情報発信を行う。2024年4月、一般社団法人 働き方改革協会 SDGs推進本部より「公認サステナブルワークアドバイザー」認定。

専門:採用戦略・HR分析・組織開発/採用コスト最適化/求人広告ROIの評価/新卒採用代行(RPO)市場調査/情報の非対称性解消

認定者ページ:一ノ瀬真理子|公認サステナブルワークアドバイザー
著書:新卒採用代行(RPO)サービスの正しい選び方(Amazon Kindle)
活動サイト:マイナビ代理店比較ガイド失敗しないRPO会社比較ガイド

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